溺愛〜ラビリンス〜
坂本 悠斗 side
翔真の事故が起こってから10日が過ぎた。未だ翔真は目を覚まさず、柚は翔真に付きっきりのようで学校に来てない。
柚がいないだけで、普段と同じ景色も色褪せ、俺自身も何もやる気が起きず、学校に行くが柚が登校していないのを確認すると早退したり、しなかったりの日々だ。でも必ず学校に行くのは、柚が登校して来るのを確認する為だ。
もう二人で会う事はない…そうアイツ等に言ったが、遠くから柚の姿を見守りたい。柚に余計な重荷を背負わせてしまった…それを何とかしてやりたい。だから早く翔真が目を覚まして、柚が登校して来て欲しい。そして柚に笑顔が戻るようにしてやる。俺はずっとそんな事を思いながら、翔真の目覚めを待っていた。
事故から2週間以上経っていた夜遅くに渉から電話がきた。
『翔真が今朝目を覚ました。約束だから連絡した。』
「ッツ…」
渉からの知らせにホッとしたし、嬉しかったが言葉が出ない。
『悠斗?』
「あ、あぁ…連絡してもらってすまない…翔真は…どんな様子なんだ?」
『…目は覚ましたが、事故の日の事はまったく覚えていない。それ以前の事も覚えている事といない事があって、記憶が混在しているみたいだ。』