溺愛〜ラビリンス〜

「…それは…記憶喪失って事なのか?…翔真は大丈夫なのか?」


渉の言葉は思いもしない事だったから、かなり大きな声で聞いてしまった。


『あぁ…命の危機は脱したんだ…取り合えず良かったと思っている。記憶は…医師からは一時的な記憶喪失だろうって言われた。ただ…いつ戻るかは分からない。何年も記憶が戻らない事もあるし、ずっとって事もあるかもしれない。今はそんな状態だから、翔真が混乱しないようにあまり色々な事を聞いたり、話したりしないようにしている。』


渉は俺とは逆に冷静な声で俺の問いに答えた。


「そうか…じゃあ見舞いは控えた方が良いのか?」


『あぁ…今は家族と、俺だけが面会している。あまり色んな人と会うと混乱するからな。』


渉の話しを聞きながら、きっと柚もホッとしただろうと思った。これで柚の肩の荷が少しでも軽くなってくれれば…と願った。良かったな…柚。


「分かった…渉…知らせてくれてありがとう。すまなかったな?」


『…いや…約束だからな?悠斗…うちの幹部から聞いたが、もう会わないって柚ちゃんの事良いのか?』


俺があの日言った事を、秋津達から報告を受けたのだろう。渉は気遣わし気に聞いてきた。




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