溺愛〜ラビリンス〜

後悔しているのか…と自分に問いかけても、自分の気持ちに結論が出ない程、あの時間は柚を諦める為に必用なものだった。柚に重荷を押しつけてしまったのに…そう思ってしまう最低な俺がいた。


「…いや…柚に可哀想な事をしたとは思っているが…柚を一瞬でもこの手に入れた事を後悔はしない。渉…俺がこれで後悔なんかしたら、それこそ柚が可哀想だろ?柚が俺の為に最後の情けをかけてくれたのを無にしたくねぇんだ。」






俺の言葉に渉は何も返さず長い沈黙が続いた。沈黙を破ったのは渉だった。


『…そうか。』


渉はそれ以上何も言わなかった。


「渉…頼みがある。」


『…何だ?この上、まだ頼み事か?お前らしくないな?』


渉はふざけた調子で返してくる。きっと分かっているんだろう。普通なら翔真や渉に借りをつくる事をしない主義の俺が、この上頼む事など柚の事に決まっている。


「…翔真がある程度回復して記憶も戻った時、もしくは…柚が翔真に俺との事を告白したり、何かの拍子に俺との事を知ってしまった時はすぐに連絡をくれ。」


『…分かった。』





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