溺愛〜ラビリンス〜

「できれば…柚が今回の事を翔真に告白したり、何処かから翔真の耳に入る前に翔真と二人で話しをしたい。」


『分かった…できるだけ柚ちゃんが矢面に立つ前に連絡する。』


俺が言わんとしている事を理解した渉は、俺の気持ちを汲み取った返事を寄越した。


「あぁ…頼む。…渉?」


『何だ?』


「この頼みは柚には内緒だ。」


『あぁ…』


「色々すまない…この借りは必ず返す。」


『フッ…あぁ、期待してる。じゃあな?』


「あぁ…ありがとうな?」


俺は礼を言うと通話を切った。

翔真が目を覚ました。それは紛れもなく嬉しい知らせだ。だが…柚にはそれだけじゃない思いがあるだろうと思うと、素直に喜んでいられなかった。これから先の事…柚と翔真の仲がどんな風に展開して行くのか…

俺には…いや…誰にもどうする事もできないかもしれないが…それでも俺はできる限り柚を守りたい。俺の罪を自分自身で受けとめたい…そう思った。


「嵐の前の静けさだな…」


呟きながら来るべき時へ覚悟をして目を閉じた。




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