溺愛〜ラビリンス〜
あー、ちくしょう。駄目だ。
俺は翔真の様に柚の側に居られない。柚が頼るのも翔真だ。
淳稀の様に優しくできないし王子スマイルなんて死んでも無理だ。結局現在一番柚に遠い存在なのは俺なんだ。
ガキの頃はこんな事を考えずに側に居られた。ガキの頃に戻りてぇな…
もう1つため息をつき俺は出かける準備を始めた。
着替えを終えれば出かける時間になっていた。
「チッ。」
こんな時でも仕事をしないと、後で親父に何を言われるか分からねぇからな。
親父が俺をこの歳で若頭に据えたのは、自分の息子を若頭として厳しい目に晒すためだ。
高校三年間で若頭としての修行をしろという事だ。まったくロクな親じゃねぇ…
インターホンが鳴る。大輝か龍也だろう。俺は玄関へと向かった。
マンションを出て20分俺の携帯が鳴る。
画面を見て、
「チッ」
と舌打ちすると大輝が
「どうしたの?悠斗?まさか女?」
大輝の空気を読まない大きな声に龍也が大輝の頭を叩く。
「いてぇー。」
頭を押さえる大輝に
「馬鹿が!」
容赦ない龍也。