溺愛〜ラビリンス〜

今までの俺達を見てきた上森には、今の俺の言葉が納得できないのは当然だ。容赦ない視線を向け俺を問いつめる上森にため息を吐いた。

上森の様子から柚は俺達の事を、上森達、親友にも言っていない事が分かった。いや…多分、柚は言えなかったんだろう。


「…上森…」


「何よ?言いたい事があるならハッキリ言いなさいよ!」


苛ついた様子の上森に、俺は自分でも驚く程冷静な声で話していた。


「俺は…もう柚の傍には居られないんだ。」


「えっ?」


俺の言葉に目を丸くした上森の動きが止まる。


「…俺と柚は結論を出したんだ。その日に…翔真が事故に遭った。事故に遭った時…柚は俺と居た。その為にすぐ翔真の元に行けなかった。その事が…柚の中で罪悪感となっていると思う。原因を作った俺が傍に居れば、柚は辛いだけだ。それに…結論を出して柚は翔真を選んだ。いつまでも今までのように俺が傍に居ちゃ駄目だろ?」


「…坂本…」


俺の言葉に上森の顔が歪んでいく。気が強い奴だが、親友思いの良い奴だって事は良く分かっている。本当は心の優しい奴だから、親友の柚やそして俺の気持ちまでも、思んばかってそんな表情をしているんだろう。




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