溺愛〜ラビリンス〜
「分かった…じゃあ私は行くわね?アッ坂本、サボってばっかりいないで、授業出なさいよ?」
上森はそう言うと出て行った。
急に静まり返った部屋に一人になると、さっきまでの上森との賑やかなやり取りが幻のようだ。
柚はきっと上森達が気にする程、気落ちしているんだろう。本来、翔真が目を覚ましたなら喜びを爆発させていなければならない柚が、そんな状態なのを上森は心配して、俺にフォローしてやれと発破かけに来たんだと思う。
上森にしたら、予想もしない展開だっただろう。だが、もう動き出してしまった歯車を止める事はできない。俺達は元の関係を続ける事はできない。
「柚から離れて…立ち直るか…できるのか?」
上森に言われた言葉を一人呟き、煙草を取り出すと火をつけ、これを最後にして次の授業は出ようと決めた。