溺愛〜ラビリンス〜

「お世話になりました。」


病室を出ると、ナースステーションに立ち寄り、母さんが担当してくれた看護師達に挨拶をする。

「いいえ若いから回復早いし、良く言う事を聞いてくれる良い患者さんでしたから、私達は楽でしたよ。それに…イケメンくん達に目の保養をさせてもらいました。フフフフッ…」


看護師長が母さんと仲良さそうに会話をしている。入院中、俺は少しでも早く退院できるよう、医師や看護師の言う事を守り優秀な患者をして予定より早く退院にこぎつけた。

入院中は柚の送迎で渉達が毎日交代で病院に来ていたが、若い看護師達が渉達を見てキャーキャー騒ぎ、看護師長に注意されていたのも日常になっていた。
俺が退院する事が決まった日、若い看護師達がガッカリしていて大変なのよ…と看護師長から言われた時にはウンザリした。


「翔真くんが居なくなると寂しいわ…」


「翔真くんたまには遊びに来てね?あっ、お友達も一緒にね?」


「そうそう!絶対遊びに来てね?待ってるから…約束よ?」


数人の看護師達が、上目使いで次々に煩く話しかけてくるのを、ウンザリしながらどう返事をしようか悩んでいた。多分、眉間には皺ができているだろう。





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