溺愛〜ラビリンス〜

運転手が荷物をトランクに仕舞ってくれ、俺と柚は後部座席に母さんは助手席に乗り込んだ。


「では出発します。よろしいですか?」


運転手が運転席に着くと声をかけてきた。


「お願いします。」


母さんが返事をすると、タクシーは走り出した。安全運転の走りで進んで行く車窓をから、久々の外の景色を眺めた。


「翔真…静かだけど、具合悪いんじゃないわよね?」


俺が景色に気を取られていると、静かだったのが気になったのか、母さんが心配そうに聞いてきた。


「あぁ…大丈夫だよ。」


「そう…なら良いけど…具合悪くなったらちゃんと言ってよ?」


退院したばかりだからか母さんは気にしているようだ。


「あぁ…」


短く俺が答えると、隣の柚が話しかけてくる。


「翔兄ぃ、久しぶりの外はどう?」


「日の光が眩しく感じるな…でも外の空気は気持ち良い。車窓からの眺めも新鮮に感じるしな?」


「フフッ…そっか…ずっと病院の中だったものね?これからは、疲れない程度に外に出てみようね?私も付き合うから…」





< 653 / 671 >

この作品をシェア

pagetop