溺愛〜ラビリンス〜
運転手が荷物をトランクに仕舞ってくれ、俺と柚は後部座席に母さんは助手席に乗り込んだ。
「では出発します。よろしいですか?」
運転手が運転席に着くと声をかけてきた。
「お願いします。」
母さんが返事をすると、タクシーは走り出した。安全運転の走りで進んで行く車窓をから、久々の外の景色を眺めた。
「翔真…静かだけど、具合悪いんじゃないわよね?」
俺が景色に気を取られていると、静かだったのが気になったのか、母さんが心配そうに聞いてきた。
「あぁ…大丈夫だよ。」
「そう…なら良いけど…具合悪くなったらちゃんと言ってよ?」
退院したばかりだからか母さんは気にしているようだ。
「あぁ…」
短く俺が答えると、隣の柚が話しかけてくる。
「翔兄ぃ、久しぶりの外はどう?」
「日の光が眩しく感じるな…でも外の空気は気持ち良い。車窓からの眺めも新鮮に感じるしな?」
「フフッ…そっか…ずっと病院の中だったものね?これからは、疲れない程度に外に出てみようね?私も付き合うから…」