溺愛〜ラビリンス〜
「あぁ…早く元のようになれるように頑張るから頼むな?」
柚は母さんとは違う形で俺の事を気にかけてくれていた。
そのまま車は渋滞に巻き込まれる事なく我が家へと到着した。
「お世話様でした。」
荷物を受け取った母さんが運転手に礼を言うと、俺がタクシーを降りるのを手伝ってくれた柚は、母さんの所へ行き荷物を半分持って俺の方へ戻って来た。
「翔兄ぃ家に入ろう?歩ける?」
心配そうに聞いてくる柚に軽く頷いて、柚の肩を借りて一緒に歩き出す。
先を歩く母さんが鍵を開け、ドアを開けると家の中に足を踏み入れた。久しぶりの我が家の空気に懐かしく感じながら、少し立ち止まってしまっていた。
「翔真、玄関にいつまでいる気?私達は荷物を持ってるんだから、早く靴を脱いで中に入ってちょうだい。柚、手伝ってあげて?」
母さんが荷物を重そうに持ちながら背後から言う。
「うん。」
「あぁ…悪い。」
母さんに返事をする柚と、俺の言葉が重なった。そして靴を脱ごうとする俺を柚が慌てて
「翔兄ぃ、待って!危ないから私がやるから、そのままでいて。」
と言って俺の動きを止めた。