溺愛〜ラビリンス〜
俺の前にしゃがみ込んだ柚は、靴に手をかけ脱がせてくれた。
「ありがとう。」
礼を言うと、柚が顔を上げて目が合った。笑顔で頷いた柚は、上がるように俺を促した。柚に従って家に上がると、柚と母さんも続いて上がった。
リビングに入ってソファーに座ると、背後で母さんが荷物を下ろしてため息を吐いた。柚も荷物を下ろしたようだ。
「あー重たかった…柚もご苦労様。取り合えずお茶にしましょう。」
母さんはそう言ってキッチンへと向かった。
「翔兄ぃ疲れたでしょう?お茶飲んで一息ついたら部屋で休んだ方が良いよ。」
柚が俺の隣に座りながらそう言ってきた。
「あぁ…そうだな。そうするよ。」
そう言って柚の頭をポンポンとすると、柚は微笑んでそしてその後戸惑ったような、不安そうな目をしてすぐに俺に気付かれないように視線を反らした。やはり以前の柚とは違っていた。柚の気持ちを全て理解できないが、今の俺達には何か壁ができてしまった気がした。
「はい。」
二人の世界に浸っている間に、母さんがお茶をいれて俺達の前に差し出していた。