溺愛〜ラビリンス〜
「あぁ…サンキュー」
「ありがとう。」
俺と柚は母さんに礼を言ってお茶を飲んだ。
「ハァ…翔真が無事退院できたし、ホッとしたわ…」
母さんは温かいお茶を飲みながらそう言った。その顔には疲れが見えた。
俺が入院した事で体力的にも、精神的にも疲労困憊しているんだろう。そんな母さんを見ると、申し訳なさが込み上げてくる。
「母さん…迷惑かけた。色々ありがとう。」
俺は母さんに頭を下げた。
「あらあら…翔真にお礼言われるなんてねぇ…あんたも大人になったのねぇ…」
人が素直に感謝の気持ちを表したのに、まったく…何て親だ。俺が眉間にシワをよせ睨んでいると、母さんがクスクス笑い出した。
「本当にいつもの翔真に戻ったわね。母さん一安心だわ。後は柚に面倒みてもらいなさい。頼むわね柚?」
「うん…」
「取り合えずまだ自宅療養だけど、少しずつ学校行けるようにしていかなくちゃね。」
「あぁ…そうだな。」
「翔兄ぃなら大丈夫だよ。運動神経良いから…すぐ勘を取り戻す事ができるよ。」
柚が笑顔でそう言うと、母さんもそうね…と言って頷いた。