溺愛〜ラビリンス〜
「爽がまだ来てないけどお前達に報告がある。」
俺がいきなり話し出すと、凌がキーボードの上で動かしていた手を止めこちらを見た。
「何だよ?」
健人が隣から興味津々な様子だ。
「翔真から…悠斗と話しがしたいって言ってきた。」
「えっ?」
健人が大きな声を出して、驚いた表情で俺を見ている。
凌はポーカーフェイスで何を思っているのか分からない。
「…まだ早いんじゃないか?」
俺が思った事と同じ事を、凌がボソッと言ってくる。
「あぁ…俺もそう思ったけど翔真の意思が強くて、すぐに場を設けないと自分で動き出してしまいそうな勢いだったんだ。仕方ないだろう…」
「…そうか。」
凌は俺の言葉を聞き納得したようだった。
「なぁ、渉…話しって…当然ユズ姫の事だよな?あの二人が他の事で話しなんてないだろうし…」
健人が確認するように聞いてくる。
「あぁ…翔真は悠斗と柚ちゃんの事を…事故の日の事を知った上で、悠斗と対峙しようとしている。正直…二人を引き合わせてどうなるのか分からない。長い付き合いだけど、アイツ等がこんな風に向き合う事はなかったからな…」