溺愛〜ラビリンス〜
彼女を傷つけたくはない。その思いは僕だって悠斗と同じだ。知られずに済めばそれに越した事はない。そう考えていると
「あんた喧嘩でもしたの?」
他の女の子じゃ絶対に僕にそんな口の聞き方しないだろうが、亜莉沙ちゃんが聞いてくる。
「えっ?!」
亜莉沙ちゃんの言葉に驚いた様子の柚ちゃんは、僕の頬をマジマジと見た。
亜莉沙ちゃんに心の中で舌打ちする。
「柚ちゃん大丈夫だよ。」
心配させない様に明るく話した。
「ホント?」
不安げに聞いてくる柚ちゃんに
「うん。」
と返事をする。
「喧嘩じゃないの?」
再度聞いてくる柚ちゃんに嘘はつきたくないけど心配かけたくないから仕方ない。
「あぁ。」
僕の返事に柚ちゃんはとてもホッとした表情をした。
「悠斗もパーティーに来るんだよね?」
と柚ちゃんに聞けば
「パーティーの事ゆうくんと話してないから分からないけど、毎年文句言いながら出席してるから多分出ると思うよ。」
柚ちゃんの答えに何故かこのままじゃ柚ちゃんが手の届かない所に行ってしまいそうで、さっきまで焦っていた気持ちは更に強くなり心が黒く染まって行く。
パーティーなんて行かせたくない。何とかしなくては……柚ちゃんは絶対に渡さない。