溺愛〜ラビリンス〜
「良いわよ。でも一人でどこか行かないでよ?悠斗くんと一緒にいるのよ?」
ママは私にそう言った後、ゆうくんに向かって
「柚姫の事お願いね。」
と言った。
ゆうくんは珍しく丁寧に
「はい」
と返事をしていた。
「行って来ます。」
ゆうくんと二人ドアの方へ向かうと、後ろから
「いいわねぇ…若いって…」
彩花ちゃんの声が聞こえたけど、振り向かずそのまま会場の外へ出た。
廊下にはまばらに人がいるだけで、会場と違い静かだった。
廊下を歩きながら今日のゆうくんは、いつもと違う気がして落ち着かなかった。
チラッと横顔を見れば、久し振りにゆうくんの顔を見た気がした。
そう言えばゆうくんと二人きりも久し振り?
そんな事を考えていたからか爪先が段差に引っ掛かった。
「キャッ!」
つまづきそうになり悲鳴を上げた次の瞬間、ゆうくんの腕が私を支えてくれていた。
「柚、大丈夫か?」
ゆうくんが心配そうに聞いて来る。
「うん。ありがとう。」
転ばないで済んでホッとしてゆうくんの顔を見上げれば、凄く近くにゆうくんの顔があった。