溺愛〜ラビリンス〜
今はこれだけで十分だ。柚への愛しさが更に込み上げてくるのを感じながら東屋を後にした。
元の道を戻りパーティー会場に入ると、お袋も加わって母親達が話しをしていた。
「あら、早かったのね。もっとゆっくりしてくればいいのに…」
柚の母親がニヤニヤしながら言い、お袋はいきなり俺に向かって
「ヘタレ!」
と言いやがった。クソババァ…俺は眉間にシワを寄せた。
「チッ」
と舌打ちをしてお袋を睨んだ。
「何よ!事実でしょ!悔しかったらモノにして来い。」
とふざけた事を言いやがった。できるもんならしてんだよ。簡単じゃねぇから苦労してんだよ。人の気も知らねぇで。
渉の母親は大笑いしているし俺のイライラは頂点に達した。
「ババァ、ふざけんな!俺達の事に口出ししてんじゃねぇ。」
お袋に怒鳴った俺はそのまま会場を後にした。
「ハァ…やっちまった…」
折角、柚に告白したのに最後がこれじゃ台無しだよな。
ロビーのソファーに座り頭を抱えため息をつきながら、さっき柚と見た庭園の景色をガラス越しに眺めた。