溺愛〜ラビリンス〜

「うまく行ったのに何暗い顔してんの?」


大輝がいつの間にか背後から声をかけてきた。


「何だ?」


低い声で聞けば


「さっき柚ちゃんといた時と随分違うじゃん。」


ハッ?
おちゃらけた口調で飛んでもない台詞を吐く大輝を睨みつける。


「お前…見てたのか?」


まったくコイツは…


「まぁね♪」


ウィンクしながら答える大輝。コイツ絶対面白がって見てたな… 俺が蟀谷(こめかみ)に青筋を立て睨み付けると後ずさりする。


「こ、これも側近の仕事だからさ。」


とぬかす大輝に蹴りを入れて


「ふざけんな!」


と怒鳴った。


「痛ぇ…」


涙目で俺を見ていた大輝は急に真顔になり


「大丈夫だよ。ちゃんと伝えられてたじゃん。柚ちゃんに気持ち伝わったよ。」


何故か嬉しそうに言う大輝。変なヤツだ。


そうか?俺の想いは柚に伝わったのか? 結果はどうなるか分からないがそうなら満足だ。


柚…柚の事を思いだしながら目を閉じてこれから先もずっとアイツの傍に居られる様に祈った。





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