溺愛〜ラビリンス〜

翔真と悠斗の間でこの事件の直後、どんなやり取りがあったのか細かい事までは知らないが、この事件から更に二人が冷戦状態になったのは間違いない。



こうして現在に至るまで翔真と悠斗の冷戦は続き、俺達は各家のイベント事に関わらなくなった。



「聞いてるの?」


母さんが怒った様に話しかける声で現実に意識が戻る。


「あぁ…」


それだけ答えると呆れた様にため息をつく母さん。


「ハァ…」


「悠斗くんを応援するの?」


いきなりの母さんに質問にどう答えて良いのか分からず黙っていると


「それがあんたの答え?」


と勝手に解釈して更に聞いてくる。

俺が応援しているのは翔真だけど、母さんに翔真の気持ちを話す訳にはいかない。
翔真と柚ちゃんはなんて言っても兄妹だからな… 俺の不用意な一言で翔真が柚ちゃんの傍にいられなくなったら、大変な事になる。間違いなく翔真は荒れる暴れる。


ここは母さんを誤解させておくべきかもしれない。俺は沈黙を決め込んだ。


「俺の事はほっといてくれよ。」


曖昧にするしかなくそれだけ言うと自分の部屋へ向かった。




< 90 / 671 >

この作品をシェア

pagetop