溺愛〜ラビリンス〜


ボーッとしていたら背後からあつくんの声がした。


振り返るとあつくんが笑顔で立っていた。


「おはようあつくん。」


いつもと変わらない朝、変わらない挨拶…なのに何か違う気がするのは気のせい?

この時、まだ私はこれから起こる事が何一つ分かっていなかった。


私が今ラビリンスの入口に居て、知らずに中に踏み込んでしまっていたなんて…これから知る事になる。






朝の不安をよそにその日は何事もなく無事に過ぎていった。


「柚ちゃん、高木先生が資料室の手伝いをして欲しいって言ってたんだけど大丈夫?」


あつくんが5時間目が終わった休み時間に聞いてきた。


高木先生は地理の教科担任で気さくな人なので、私も頼まれ事を引き受ける事がたまにあった。

あつくんもクラス委員だから他の先生にもだけど頼まれ事が多い。


高木先生の手伝いを今までも一緒にやった事が何回かあった。


「うん、大丈夫だよ。」


「じゃぁ放課後ね。」


「うん。」





6時間目の英語の授業が終わり、翔兄ぃに今日は先生の手伝いがある事をメールして倉庫に行けない事を伝えた。






< 99 / 671 >

この作品をシェア

pagetop