ツンデレ社長の甘い求愛
その下には珈琲のしみがしっかり残っていた。


「それにお冷を持ってくるのが遅い。オーダーを取るときに運べばいいと思っているのか? 客を散々待たせておいて喉が渇いているって想像できないバカなんだろうか」

徐々に声に怒りが篭もり出し、イライラしているのが顔にも出てきた。

ギョッとしてしまい、慌ててメニュー表で周囲を覆い小声で注意した。


「ちょっと社長! 私たち、偵察に来ているんですよね!? そんなに苛々していたら、ばれちゃいますよ? あくまで私たちは一般客ですよね?」

釘を刺すように言うと、社長は眉を寄せ唸り出した。

「そう、だったな」

そしてバツが悪そうにメニュー表へと視線を落とした。

様子を窺いながら、しみじみ思ってしまう。

さすがというかなんというか……。


店内に入った途端に社長スイッチが入ったかのように、くまなくチェックし始めちゃうところは、やっぱりさすがだなって認めざる負えない。

数時間だけとはいえ、ヘルプで入っていたのに気づけなかった自分が情けなくなるくらいに。

それに社長が言っていたことは、すべて正論だ。

説明がないのはまずいし、長時間待たせておいた客にお冷を早く持ってこないのもマイナスポイント。
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