ツンデレ社長の甘い求愛
「びっくりしたのはこっちだ。いつも無駄に口を挟んでくるうるさい奴がずっと静かだったんだ。心配くらいするだろう」

「……え、心配?」

前髪を整えていた手が止まってしまい、そのまま社長を見上げれば、彼はしまったと言わんばかりにそっぽ向いてしまった。

「どんなに腹が立つ奴でも俺の会社の社員なんだ。……心配して当たり前だろう」

「社長……」

もうなんなのだろうか、この人は。

傲慢で厳しいキャラを貫き通すなら貫き通して欲しい。

最近社長は私に意外な一面を見せすぎだ。

素直じゃなくて不器用で。……けれど心配してくれる優しい人――。

「とにかく具合が悪いなら無理せず早く帰れ。他の社員に移されたら迷惑だ」

優しいのか厳しいのか分からない。

でも――、どうしてかな?
胸の鼓動が忙しない。

心の奥がむず痒くて、ほんのり苦しくて。

本音は声を上げて笑いたいところだけれど、ここで笑ったらどうなるか安易に想像できるからグッと堪え、社長を見据えた。
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