ツンデレ社長の甘い求愛
「会長、違うんです。あの日はたまたま社長とお会いして、我が社系列の飲食店へ視察に入っただけなんです。決してデートというものではっ……!」

「ハハハッ! さすがは大喜じゃ。デートにまで仕事を持ち込むとは。それに付き合ってくれた馬場さんは頭が下がります」


あぁ、違うんです。決して社長の恋人としての株を上げたいわけではないんです。

「会社でもよく大喜に意見して下さるそうじゃな。浅野から報告を受けておった。毎回戦略会議では、怯むことなく自分の意見を述べられる意思の強い女性だと」

「そう拝見いたしました」


あぁ、だめだ。

ますます誤解を確信に導いている気がしてならない。


「それで失礼を承知ながら、馬場さんのことを少し調べさせてもらいました。私はふたりの交際にも結婚にも大賛成じゃが、なんせ役員は頭の固い者ばかりでな。結婚はビジネスと考えておる者も少なくない」

「馬場様を見張る形になってしまい、申し訳ありませんでした」

すかさず浅野さんが謝罪してきたところで、ハッとする。


「もしかして最近感じていた視線って……」

チラリと浅野さんを見ると、再び頭を下げ「私です」と述べた。

そうだったんだ、最近やたらと感じていた視線はストーカーなんかではなくて、浅野さんだったんだ。
< 158 / 347 >

この作品をシェア

pagetop