ツンデレ社長の甘い求愛
けれどそう思えば思うほど、複雑な気持ちに悩まされていた。


私が好きになったのは山本さんなはず。決して社長を好きになったわけではない。

それなのに失恋したなんて――。

いや、同一人物だったら当たり前な話だけれど、いまだに半信半疑だし。

例え社長に大切な存在がいなかったとしても、社長と山本さんを同一人物だと受け入れ、好きになれるか? って聞かれたら返答に困ってしまうし。


どうしても社長と山本さんが結びつかない。

だってまずなにより、ふたりの纏っている空気が違うし! ……でも、な。

社長は意外と優しい一面を持ち合わせている。

優しさを表に出すのが下手なだけで、誰よりも社員のことを想っていると思うもの。


私のダメなところを注意してくれて、優しい言葉を掛けてくれて。

金曜日だって誉めてくれて――。

社長とのやり取りを思い出すと、なぜか胸がトクンと鳴ってしまう。


もしかしたら社長が山本さんなのかもしれない、と思うと余計に。

いつの間にかパソコンキーを打つ手が止まっていることに気づき、慌てて気持ちを入れ替え、仕事に取り組ん
だ。



「やばい、時間なくなっちゃう」

あれから集中して仕事に取り組めたけれど、気づけば昼休みの三分の一が終わっていた。

急いで財布片手にコンビニに駆け込み、サンドイッチと珈琲を購入しオフィスへと戻っていく。
< 166 / 347 >

この作品をシェア

pagetop