ツンデレ社長の甘い求愛
気づけば最後のひとりになってしまった。

「これくらいにして私もそろそろ上がろうかな」


今日はまだ月曜日だし、疲れを持ち越さないように早く帰って身体を休めないと。

色々と考えてしまっていたから仕事の効率が上がらず、こんな時間になってしまった。


佐藤さんには十九時を回っても、私が帰宅しない場合は上がって下さいと伝えているけれど、たまにオーバーして待ってくれているときがある。


今日もいつものように待たせてしまっていたら申し訳ないし、早く帰ろう。

帰宅したら好きな入浴剤を入れて入浴をしながら本でも読もうかな。

少し頭の中から社長のことを消し去らないと、容量オーバーしてしまいそうだ。


そんなことを考えながら帰り支度をしていき、最後に戸締りの確認をしている時だった。

静かなオフィスのドアが勢いよく開いたのは。


「やはりこちらにいらっしゃいましたか」

驚き身体を大きく反応させてしまいながらもドアの方を見ると、そこには呼吸を乱した浅野さんの姿があった。

「え……浅野さん?」

いきなり現れた浅野さんにびっくりし、固まってしまっている私の元へ彼はズカズカと大股で近寄ってきた。

思わず身構えてしまうと、構うことなく彼は私の腕を掴み歩き出した。

「ちょっ……! なんですか!?」

「馬場様のお荷物はこちらですね」
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