ツンデレ社長の甘い求愛
「あの、本日は一体どのようなご用件でしょうか?」

聞いたはいいものの、すぐに鋭い目で睨まれてしまいたじろいてしまった。


「まずはこちらがお聞きしたいのですが。お約束をお忘れですか?と」

「約束……ですか?」

意味が分からず首を傾げてしまうと、浅野さんは深い溜息を漏らした。


「そのご様子ですと、やはりしっかり聞いておられなかったんですね。金曜日、会長が話されていたことを」

金曜日? 会長が話していたこと?

記憶になくますます首を傾げるばかり。


「すみません、ちょっと思い出せません」

素直に謝罪をすると、浅野さんは再び溜息を漏らした後に話してくれた。


「本日は会長の米寿のお祝いでございます。是非そのパーティーに会長自ら馬場様にご出席願いたいと申し立て、馬場様もご了承なされたと思うのですが」


どうしよう、まったく記憶にない。

そんな話を聞いた覚えも、ましてや了承した覚えもない。

記憶になくてどう答えたらいいのか分からなくなり、ひたすら顔を引きつらせているとミラー越しに浅野さんと目が合った。


「すみません、金曜日のご様子ですと上の空でしたので、もしかしたらしっかり聞いていられなかったと思いました。しかし予感が的中してよかったです。なにより残業してくださっていて助かりました」
< 170 / 347 >

この作品をシェア

pagetop