ツンデレ社長の甘い求愛
「……すみませんでした」

記憶にないというのに、了承した私が悪い。

そのせいで浅野さんの仕事を増やしてしまったようだし。


「見つかって安心しました。会長は馬場様がお越しになるのを心待ちにされておりますので。……馬場様にと正装一式揃えられてお待ちです」

「えっ!? 一式ですか!?」


さすがにこれには声を荒げずにはいられない。

そんな私に構うことなく浅野さんは運転に集中したまま、淡々と述べていく。


「これも金曜日にお話されましたが、ご自身主催のパーティーにて馬場様をお披露目する予定でございます。大喜様とお付き合いされたい女性はたくさんおります故、牽制の意味も込めてです。大喜様には馬場様という恋人がいると」


「そんなっ……! 浅野さん、止めてください! 私、そんなところには行けません!!」

「なにをおっしゃっているんですか、無理なお願いです」


いや、無理でも困る! お披露目なんてとんでもない!!

私は本当に社長の恋人でもなんでもないのだから。

ガーッと言いたい気持ちをグッと堪え、浅野さんの理解を得られるような言葉を選びながら話していった。


「浅野さん、金曜日にもお話しましたが私と社長は本当に恋人同士なんかではないんです。誤解なんです。……それに社長にはお付き合いされている大切な女性がおります」

「……まさか」

これにはさすがの浅野さんも声を上げた。
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