ツンデレ社長の甘い求愛
「本当です！　私、社長から直接聞きましたから！　ですから私が行くわけにはいきません。会長に紹介されていない女性なら、社長に言って連れて来てもらってください」


必死に訴えかけると、浅野さんは考え込んでしまった。

けれど言い返してこない、ということは私の話を信じてくれたのだろうか。

緊張しながら彼の答えを待っていると、ゆっくりと口を開いた。


「仮に馬場様のお話が真実だとしても、申し訳ありませんが、本日だけは付き合っていただきます」

「えっ!?　いや、ですから私はっ……！」


「皆様には後日改めて私の方から否定いたしますので、本日だけは大喜様の恋人のフリをしていただけませんか？」


切実な思いに戸惑いを隠せない。

どうしてそこまで私を社長の恋人としてお披露目したいのだろうか。

謎が増す中、その理由を浅野さんは話してくれた。


「馬場様もご存知ですよね、大喜様が社長に就任された経緯を」

「……はい」

前社長の突然の死があったからこそ、あの若さで社長に就任したことは、我が社の社員なら皆知っていることだ。


「大喜様がプライベートで山本性を名乗っている理由はご存知でしょうか？」

「いいえ、知りません」
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