ツンデレ社長の甘い求愛
「幼い頃の記憶が今も根強く残っておられるのでしょう。会長の奥さま、大喜様にとって祖母が自分の母親にしたことを今でも鮮明に覚えていらっしゃるようで。前社長がお亡くなりになられた際、会長は一緒に住もうとお話されたのですが大喜様は拒否されました。二度とあの家では暮らしたくないと」


なにも言えなかった。

社長の気持ちが分かるから。誰だって嫌な思い出が残る場所へは二度と戻りたくないはずだから。


「きっと祖母の行いを止めなかった会長に対しても、大喜様はよく思われていないようです。離れて暮らしていた分、おふたりの溝は深まるばかりでして、大喜様は滅多なことがない限り、会長とはお会いになりません。ですが会長は誰よりも、大喜様のことを愛していらっしゃいます。誰よりも大喜様の幸せを願っておられるんです」


それは金曜日にお会いして伝わってきた。

会長は社長のことをとても愛しているのだと。


だから私のことを浅野さんに調べさせたりしたんでしょ? そして家に招いてくれたんでしょ?


「これはご内密にして頂きたいのですが、会長は心臓を患わっており、余命残りわずかと医師より宣告されております」


「――本当、ですか?」


信じられない話に耳を疑ってしまった。

確かにお歳は召されているけれど、とても病気のようには見えなかった。


「真実です。なので会長は大喜様の幸せを見届けたいんです。なので無理を承知の上でお願いいたします。今日ばかりはお付き合い頂けますでしょうか?」
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