ツンデレ社長の甘い求愛
浅野さんは私の答えなんて分かって聞いているのだろうか。

こんな話を聞かされて、「無理です」なんて言えるはずない。

そこまで非常な人間にはなれないよ。でも――。


「あの、ひとつだけお伺いしてもよろしいですか?」

「もちろんです」

すぐに了承してくれた浅野さんに、気になったことを聞いた。

「会長の身体のこと、社長はご存知なんですか?」

尋ねると浅野さんはすぐに首を横に振った。


「いいえ、ご存じありません。会長からきつく口止めされておりますので。なのでどうか馬場様も口外せぬよう、お願いいたします」

やっぱり知らないんだ。そうだよね、きっと知ったら社長だって黙って見過ごせないはずだもの。


「分かりました。ですがあの! もうひとついいですか?」

「なんでしょうか」


ここから本題だ。

少しだけ身を乗り出し、不安なことを訴えかけた。


「出席するのは構いません。しかし私と社長は本当に付き合っていないんです。それなのに社長が話を合わせてくれるとは、まったく思えないのですが」
< 176 / 347 >

この作品をシェア

pagetop