ツンデレ社長の甘い求愛
私が社長の正体が山本さんだって信じられないように、社長だってきっとすぐには信じられないでしょ?

お互い様ですねで終わって。きっと今後も良き上司として接してくれるはず。

犬友達としてだって付き合ってくれるよね? だってラブちゃんとカイくん、あんなに仲良しだし。

今までの生活に戻るだけ。

ただ私の恋心は失われてしまうだけ。

何度も自分に言い聞かせ辿り着いた先は、大きな扉の前。


「どうぞこちらです」

重い扉が開かれると、まず人の多さに圧倒されてしまった。

広い会場には煌びやかな世界が広がっていた。


案内されるがままついていくしかできない。

オロオロしながら進んでいく先に浅野さんの姿を見つけると、ホッと胸を撫で下ろした。

私を浅野さんの元まで案内すると、ホテルの従業員の方は一礼し去っていった。

するとなぜか浅野さんはまじまじと私を見てきた。


「……あの?」

居心地が悪くなり声を上げると、浅野さんはすぐに咳払いをし「申し訳ありません」と謝罪してきた。


「馬場様があまりにお綺麗になられておりましたので、少々驚いてしまいました」

「――え」
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