ツンデレ社長の甘い求愛
浅野さん、今私のことを「綺麗」って言った?

さり気ない褒め言葉に顔が熱くなっていく。


「それはえっと、プロの方のおかげです」

「いいえ、そんなことございませんよ。……きっと大喜様も驚かれるかと思います」

ふわりと微笑まれると、ますます恥ずかしくなるばかりだった。


「大喜様は遅れて来られるようです。会長は今、取引先の方とお話中なので、なにか召し上がってお待ちください。なにかありましたらそこにいる者にお声掛け下さい」

浅野さんの視線の先にいたのは、いかにもSPらしき体格の良い男性。

目が合うと小さく会釈してくれて、つられるように私も返した。


「分かりました。あの、社長が来たらまず私に話をさせてください。……いきなり紹介されてもお互いうまく演じられないと思いますので」


「かしこまりました。よろしくお願いいたします。では」

丁寧に一礼すると、浅野さんは会長の元へと戻っていった。

なにか召し上がってお待ちください……とは言われたものの。


パーティーは立食スタイルらしく、テーブルには眩しいくらいの高級食材が使用された料理が並べられているけれど……。


チラリと周囲を見回せば、男性はいかにもお偉い方ですオーラの方ばかりだし、女性は目を瞑ってしまいそうなくらい煌びやかにドレスアップした綺麗な方ばかり。

どんなに偽ったって場違い感は拭えない。
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