ツンデレ社長の甘い求愛
よく見ると、みんなお皿にとって普通に食べているし、私が食べても何も問題ないよね。

そう思い、いざ向かったときだった。

いきなり私の行く手を阻むように目の前に社長が現れたのは。

足を止め顔を上げると、社長はまじまじと私を見下ろした後、深い溜息を漏らした。


「どこかで見た顔だと思ったら……やっぱりお前だった」

そして次に向けられたのは鋭い眼差し。

慣れているとはいえ、怯んでしまう。

「どうして馬場がここにいる。しかもなんだ、その恰好は」

早速追及され、慌てふためいてしまう。


いや、ちゃんと社長に話さなくてはいけないことは頭では分かっている。

けれど浅野さんにまだ社長は来ないって聞いていたし、すっかり油断していたときに現れたんだもの。
誰だってテンパる。


「あの、ですね……」

けれどなにか言わなくてはと顔を上げしっかりと社長を真正面に捉えた瞬間、息が詰まった。


いつも以上にきっちりとセットされたヘアスタイル。背後には煌びやかなシャンデリア。

社長は社長なのに、普段より二割増しでカッコよく見えてしまったから。

しばし呆然と眺めてしまっていると、社長は怪訝そうに顔を歪めた。

「なんだよ、俺の顔になにか付いているのか？」

「え、あっ！　いいえ！　ついておりません！」
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