ツンデレ社長の甘い求愛
社長の優しさに胸が締めつけられていく。

「待っていろ、今誰かに車を手配させるから」

そう言って社長はスマホを取り出し、誰かに電話を掛け始めようとしたけれど――。


「待ってください!」

気づいたら身体が勝手に動いて声を上げ、社長の腕を掴み電話を掛けるのを阻止している自分がいた。

「馬場……?」

当然社長は驚き、私を見つめてくる。


社長の好意は素直に嬉しい。

それにこんな煌びやかな場は苦手だし、こんなところで社長の恋人として紹介されるなんて無理。

社長には大切な女性がいることも知っているから尚更。でも――。


「私なら大丈夫です! 心配ご無用です」

なぜかこのまま帰るわけにはいかないって思ってしまったの。

浅野さんの話を聞いたからかもしれない。

社長の優しさに触れてしまったからかもしれない。

「いや、だが……」


社長は困惑し私の真意を探るような目で見つめてくる。

ううん、違う。ふたつとも理由になっていない。――私、もっと社長と一緒にいたいんだ。
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