ツンデレ社長の甘い求愛
すると社長はすぐに私の腕を外し、途端に厳しい表情を見せた。

それだけで仲が良い顔見知りではないと察知できる。


「お久し振りです、おふたりもいらしていたんですね」

社長は笑っているけれど、声は全然笑っていない。

「あぁ、お前と違って俺たちはそれなりに暇だからね」

ピリピリとした空気に私はどうすることもできず、様子を見守るばかり。


一体このふたりは社長とはどういった関係なのだろうか。

「いいよな、血の繋がりがあるってだけで、今井家の人間ではないくせに、社長の椅子に座ることができて」


「あぁ、本当にただ座るだけだがな。聞いているよ、お前の社内での評判は。傲慢社長として社員に嫌われているそうじゃないか」


なに、この人たち。失礼すぎる! なんの権限があって社長に対して暴言吐いているわけ?

そんなに偉い人なの?

まるで自分が言われているように腹が立ってしまう中、社長は急に私の肩を抱き寄せてきた。

一瞬にして密着する身体に、目を見開いてしまう。

「え、社長――」


「社内での噂は存じませんが、俺はただ自分に与えられた職務を全うしているだけです。これから挨拶に回らないといけないので、これで失礼」
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