ツンデレ社長の甘い求愛
早口で捲し立てると社長は私にだけしか聞こえないようにコソッと「行くぞ」と言うと、肩を抱いたまま彼らに背を向けた。


背後からは「図星だから逃げたんだ」とか「情けないやつ」なんて暴言が聞こえてくる。

それでも社長はなにも言い返すことなく歩みを進める。

その態度がますます私のイライラを募らせていった。

そして連れて来られたのは、パーティー会場の外だった。

すぐに肩は離され、「悪かったな」と謝られた。

「……いいえ」

私は全然平気。それよりも――。


「大丈夫ですか」

「――え」

「社長、辛そうな顔をしているから……」

気づいていなかったのかな? 今にも泣きそうな顔をしているって。


それなら気づかないフリをするべきだったのかもしれない。けれど、そんなの無理。

社長の辛そうな顔を見せられてしまったら、言わずにはいられなかった。


「どうしてあんなこと言われて黙っていたんですか? いつもの社長らしくないです」

「馬場……」

そうだよ、いつもの社長らしくない。
逃げるように去るなんて――。
< 191 / 347 >

この作品をシェア

pagetop