ツンデレ社長の甘い求愛
「あのおふたりとどんなご関係かは存じませんが、黙っているなんて社長らしくありません! いつものように一睨みして黙らせればいいじゃないですか!」


正論を言ったつもりなのに、社長は目を見開いた後、声を上げて笑い出した。

「なっ……! 私は社長を笑わせるつもりで言ったのではありません!」

勘に障り負けじと声を荒げると、社長は口元を手で覆いながら「悪い」と呟いた。


「馬場の言う通りだよな、あんなのいつもの俺らしくなかった」

らしくない社長に勢いを失っていく。

いつもの社長だったら、ここで言い返してくるところじゃない。

なのにあっさり認めちゃうて――。


「あのふたりは俺の従兄弟なんだ。うちの子会社で働いている」

「そう、だったんですか」

社長の従兄弟だったなんて。


じゃあますますあり得ないじゃない。

従兄弟なのに、社長に対してあんなこと言うなんて。


わっと言いたい気持ちをグッと堪え、社長の話に耳を傾けた。


「俺は一度今井家を出た人間なんだ。……そんな俺が父さんが亡くなってからすぐに社長に就任したのを良く思っていないんだろう。……俺と同じようにずっと下積みをしてきたから余計にな」


平気なフリして微笑んでいるけれど、そんな顔を見せられてしまったら胸が苦しくなってしまうよ。
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