ツンデレ社長の甘い求愛
「いって……」

不意に聞こえていた声に社長の前に回り込むと、かけられたシャンパンが目に入ってしまったのか、痛そうに目を押さえていた。


「社長、大丈夫ですか?」

慌ててバッグの中からハンカチを取り出した。

「これ、使ってください。あ、それよりも顔を洗った方がいいかもしれません」

彼の腕を掴み、ドアの方へと進んでいく。


「悪い」

いつになく弱々しい声で謝ってくる社長に、堪らず声を上げた。


「何言っているんですか、謝るのは私の方です! ……すみませんでした、頭に血が上ってしまって怒りをぶちまけてしまいました」


「そうだったな、あれはさすがに従兄弟たちがカチンときても仕方ない」

「……はい」


おっしゃる通りで返す言葉もございません。

「本来なら私がシャンパンをかけられるべきだったのに……本当にすみません」


ボーイにドアを開けてもらいパーティー会場を出て、洗面所を探していると、掴んでいた腕は離され、逆に腕を強い力で掴まれてしまった。


「謝るなよ。……あれ、けっこうグッときたんだから」

「――え」
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