ツンデレ社長の甘い求愛
顔を上げれば、社長は目元を押さえていたハンカチを退かし、真剣な瞳を私に向けてきた。

「嬉しかったよ、馬場が言ってくれた言葉が。……すっげぇ嬉しかった」

「社長……」


彼の瞳は大きく揺れ、熱い眼差しを向けられる。

私は微動だに出来なくなってしまった。


誰もいない廊下で彼は少しずつ私との距離を縮めてくる。

それと比例するように、胸の高鳴りは増していき、息苦しさを覚えていく。


「あの、社長……?」

目は潤んでいて、心なしか頬が赤い気がする。

なによりきっちりセットされていた髪の毛がいい感じに崩れていて、なんとも言えぬ色っぽさを醸し出している。


どっ、どうしようこれ……!

社長ってば一体どうしちゃったの!?


ひとりテンパってしまうも、社長の顔はどんどん近づいてくる。


ちょっと待って。これはさすがにまずくないですか?

キスされてしまいそうなんだもの。


どうして? 社長には彼女がいるんでしょ? 

そう分かっているのに彼の胸元を押し返すことも止めることもできない。


もしかして私……このまま社長とキスしても、いいと思っている?
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