ツンデレ社長の甘い求愛
声が聞こえてきたかと思ったら、重く圧し掛かっていた退場から解放されていく。

寝ている社長の身体を支えてくれたのは浅野さんだった。


「浅野さん……!」

「すまなかったね、馬場さん。大喜の身体を支えるのは大変じゃっただろう」

「会長……!」


そして浅野さんの背後から現れたのは、袴姿で杖をついた会長だった。

「あっ、本日は色々とご用意頂いてしまい、申し訳ありませんでした!」


慌てて頭を下げると、会長は「とんでもない」と声を荒げた。

「こっちがお誘いしたんだ、当然の報酬として受け取って下され。……それに良いものを見せてもらったしな」


そう言うと会長は眠っている社長を愛しそうに目を細め見つめた。


「大喜があんなに取り乱した姿も、従兄弟たちに啖呵を切る姿も初めて見た。……馬場さんを守るために、苦手なアルコールを自ら被った姿もな」

「――え、苦手、なんですか?」


目をパチクリさせてしまうと、浅野さんはクスリと笑った後、会長に代わり話してくれた。


「ご存知なかったんですね。大喜様は一口でもアルコール類を口に含んでしまうと、すぐに酔いが回って寝てしまわれるんですよ。こうなっては朝まで起きません」


「今井家の男はあまり酒に強い方ではないが、大喜は特段に弱くてな」
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