ツンデレ社長の甘い求愛
そうだったんだ。それなのに社長、私を庇ってくれたなんて――。

また社長の優しさに触れて、胸が鳴ってしまう。


「会長、大喜様がこうなってしまっては本日のお披露目は無理かと……」

「あぁ、残念だがそうだな。だがそれ以上に満足しておるよ。ふたりが本当に愛し合っているのだと目の当たりにできたからの」


「ほっほっほっ」と陽気に笑う会長に顔が熱くなっていく。

すると会長は杖をつきながら私の一歩前まで歩み寄ってきた。

すぐ目の前に立つ会長に緊張が増してしまう中、彼は目尻に皺を沢山作って言った。


「馬場さん、こんな孫だが今後もよろしく頼みます。……私は大喜が幸せになることだけが願いなんです」

「会長……」


ズキンと胸が痛む。

会長の社長を想う気持ちが痛いほど伝わってくるから――。

それなのに私は、嘘をついている。私は社長の恋人ではない。

恋人ではないけれど……。


「私は……社長のことを尊敬しております。会長と同じように、私も社長の幸せを願っております」

これ以上会長に嘘などつきたくない。

だから自分の正直な気持ちを伝えた。


私は社長のことを尊敬している。――そして好意を寄せているからこそ、幸せを願っている。

できるならそばにいたいとも――。
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