ツンデレ社長の甘い求愛
それにしても……。

初めて見る社長の寝顔は、びっくりするくらい可愛らしい。

普段が不断だからか、可愛く見えてしまう。


自然と口元が緩んでしまったとき、車が信号を右折した瞬間、社長の身体はバランスを崩し私の肩に寄りかかってきた。


思わず肩が飛び跳ねてしまうと、その様子をミラー越しに見られてしまったようで、浅野さんはクスクスと笑い出した。


「すみません、もっとゆっくり右折するべきでしたね。失礼しました」

「いっ、いいえ……」


大丈夫です、大丈夫ですが……。

チラッと隣を見ると、すぐ目と鼻の先には社長の髪の毛があって、頬に触れてくすぐったい。


どうしよう、これ。

身体は硬直したままゆっくりと手で元の体勢に戻そうと試みるも、しっかり寄りかかられてしまっていて、なかなかうまくいかない。


密着する身体に戸惑いを隠せないけれど、でもなぜか感じる社長の体温が心地よくて、このままでもいいかもしれない……と思えてしまう。


気持ち良さそうに眠っているし、起こしてしまったら可哀想だよね。

必死に自分にそう言い聞かせていると、浅野さんとミラー越しに目が合ってしまった。

彼は様子を見て微笑ましそうに笑っていて、居たたまれなくなる。
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