ツンデレ社長の甘い求愛
「あのひとつよろしいでしょうか」

「はっ、はい!」

許可を取ると、浅野さんはどこか嬉しそうに話し出した。


「馬場様は大喜様との交際を否定しておられましたが、私の目にはおふたりは互いをしっかり想い合っているように写りましたよ」

「――え」


呆然とする私に浅野さんは話を続ける。


「長年大喜様を見てまいりましたが、あそこまで取り乱された大喜様を見たのは初めてですし、なにより会場に到着後、大喜様はすぐに馬場様を見つけられました。あれだけ沢山の招待客がおり、馬場様も普段とは違った装いだったのにすぐにです。……それを見て交際していないのは嘘ではないか――と思ってしまいました」


言葉が出なかった。

信じれらなかった。社長がすぐに私を見つけてくれたなんて。


やだな、社長には恋人がいると分かっているのに期待してしまいそうになる。


もしかしたら社長も私のことを、異性として意識してくれている……なんて。

そんなわけないのに勘違いしてしまいそうになるよ。


無意識のうちに私に寄りかかったまま眠る社長の顔を覗き込んでしまう。


「会長は役員たちや親族におふたりの交際については、文句を言わせない所存でございます。……会長は後悔されているんです。大喜様の母親に対しての周囲の振る舞いについて、しっかり口を挟まなかったことを」

「後悔……ですか?」
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