ツンデレ社長の甘い求愛
「馬場さんは、大喜のことを想ってくれているのだな?」

顔を上げると、会長は真意を探るような目で私を見据えていた。

「……はい」


戸惑いながらも返事をすると、すぐに会長は浅野さんを見た。

「浅野」

「はい」

「約一ヵ月大喜の様子を見ていて、交際している女性の影は見えたか?」


「出勤時からご帰宅まで見守らせていただきましたが、馬場様がお話されているようなお相手と会われていた様子は、一度も見られませんでした」


浅野さんの話を聞いて、再び会長は私と向き合った。


「私の中で浅野の言うことは昔から絶対でな。もちろん馬場さんが嘘を言っているとは思えない。……だからここは私に任せては頂けませんかな」

「――え、任せる……ですか?」


理解できず聞き返してしまうと、会長はにっこり微笑んだ。


「大丈夫、悪いようにはしません。ここはこの老いぼれに任せてください」

返答に困り思わず浅野さんを見てしまうと、彼は「安心して会長にお任せください」と言うと、丁寧に頭を下げた。

そんなふたりに私は頷くことしかできなかった。
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