ツンデレ社長の甘い求愛
出張ラブパニック
「ねぇねぇ、あの人でしょ? ほら、社長の……」

「案外普通の人なんだね」


オフィスを歩けば、必ず女子社員から陰口や妬みを言われる。

「ほら、あれだろ? 社長の女って」

「よく戦略会議で社長と張り合っていたんだろ?」

「そりゃ張り合えるよな。社長と付き合っているなら」


しかも言ってくるのは女子社員ばかりではない。出世に意欲的な男性社員にも言われてしまう始末。


社内中に噂が広まって一週間。

噂なんて所詮ただの噂。きっとすぐに消えるだろうと構えていたのが大間違いだった。


私のこれまでの社長に対する態度もあって、噂の真実性が増しているようだ。

おかげで日に日にコソコソと……いや、最近では私に聞こえるくらい堂々と言われてしまっている。


「あっ、かすみ先輩おはようございます」

「おはよう、亜美ちゃん」


エレベーターホールへ向かう途中、陽気な声で挨拶しながら駆け寄ってきたのは亜美ちゃんだ。

「今日も朝からジメジメで嫌になっちゃいますね」

「そうだね、髪もベタつくし」

「そうなんですよー!」


社内でどんなに陰口を叩かれようと、めげずに仕事に向き合えているのは、第一企画部のみんながいるからだ。
みんなだけはいつもと変わらず接してくれている。
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