ツンデレ社長の甘い求愛
何も言えずただ見つめることしかできない中、彼は目を細めた。


「似ているな、馬場と長日部さんは……」

「――え」


ポツリと呟かれた声に、耳を疑ってしまう。

だって今、社長「長日部さん」って言ったよね?


まじまじと見つめてしまっていると、彼は我に返ったのかバツが悪そうに「なんでもない」と言い、窓の外へと視線を向けてしまった。


この様子だと、ただふと思っただけ……だよね? 同一人物だと確信を得られたわけではないよね?


目を逸らすことなく眺めていると、次第に社長は落ち着きを失ったように膝の上で指をトントンとさせ始めた。


どこか照れくさそうに――。

これはもしや、しっかりと私の気持ちは社長に伝わったと解釈してもいいのかな……?


ポカンとしたまま彼を見つめてしまっていると、窓に反射して映る社長の頬はほんのり色づいていた。


あぁ、もう。

どうして社長はこうも女性心をくすぶるのがうまいのだろうか。


そんな反応をされて胸キュンしてしまったんですけど。
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