ツンデレ社長の甘い求愛
あぁ、この瞬間の開放感がたまらない。


洗顔ホームを泡立てて顔を洗い、ぬるま湯で落とした後にタオルで水滴を拭きとった自分の顔が、ぼんやりと鏡に映る。

そんな見慣れたはずの自分の顔を見ては、毎日のことながら苦笑いを浮かべてしまった。


「いつ見てもまるで別人だな」

よくメイクで女は変わる――なんて言うけれど、その言葉の象徴が私自身だと思う。


毎朝一時間以上かけて仕上げていく会社用メイク。

それをすべて取っ払ってしまった今の状態で会社の人たちと会っても、向こうは絶対に私だって気づかないはず。


会社以外では眼鏡を使用しているけれど、その眼鏡も乱視が強くレンズが分厚い。

洗面所に置いてある眼鏡を掛けると、鏡には鮮明に自分の顔が映った。


うん……この眼鏡がますます誰だか分からなくしている要因のひとつかもしれない。


きっちり後ろでひとつにまとめていた髪を解くと、天然ウエーブ髪が揺れる。

これでオフの私の出来上がりだ。


飲み会に行きたくないもうひとつの理由がこれ。
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