ツンデレ社長の甘い求愛
そう、だよね。だったら打開策あるじゃない。

いよいよ私の身体を押し退け出て行こうとする社長の腕を再び掴んだ。


「社長」

「なんだ、しつこいぞ」

また振り払われそうになった腕を必死に掴む。

そして彼をジッと見つめた。


「よーく考えてください。そもそもこんなことで言い争いをしているのは可笑しくないですか? 私と社長はただの上司と部下です。しかもこれは不測の事態。お互い好きで同じ部屋で過ごそうとしているわけではありません!」


きっぱりと言うと社長は眉を寄せ、「何が言いたい?」と尋ねてきた。

そんな社長に迷いなく言った。


「たった一晩、数時間だけです。割り切って同じ部屋で一晩明かしましょう」


途端に社長は愕然とし、声を震わせながら「正気か?」と聞いてきた。


「もちろん正気です! 社長は私のことを女として見ていませんよね? だから言えるんです!! ……それに以前、偵察に行ったカフェでお話されていたじゃないですか。大切な存在がいるって。そんな社長とだから一晩共に過ごしても、平気だっているんです!」


おまけについ最近、不可抗力とはいえ一晩共にしちゃったわけだし。

今さらだ、一晩くらいどうにでもなる!!

そう、思っていたんだけど……。

社長は目を泳がせた後、やけくそ気味に言った。
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