ツンデレ社長の甘い求愛
「ご搭乗ありがとうございます。間もなく本便は――……」

機内アナウンスが流れる中、私と社長は席に座りホッと一息ついていた。


「よかったです、間に合って」

「最後の搭乗客でギリギリだったけどな」


ホテルを出た後、支店工場やお世話になっている取引先に伺い、地元の特産品店訪れたりしていたら、あっという間に時間は過ぎていった。


お昼も簡単に地元のラーメンを食べて終わり。


せっかくふたりっきりの出張だったのに、ムードもへったくれもない。

それでも社長と充実した時間を過ごせた。

やっぱり彼は仕事熱心で話を聞いているだけで勉強になったし、お互い意見を出し合って楽しかったし。


ゆっくりと動き出す飛行機。

二日間の出張もあと少しで終わってしまうと思うと寂しさを感じてしまう。


窓の景色をぼんやりと眺めていると、社長がポツリと呟いた。

「なにかと楽しい二日間だったな」

「――え?」


意外な言葉に隣を見れば、社長は少しだけ口元を緩めた。


「最初はじいさんを恨んだけど、実のある二日間を過ごせて良かったと思うよ。……まぁ、多少のトラブルはあったが、それも含めて思い返すと楽しかった」

「社長……」
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