ツンデレ社長の甘い求愛
もし……あの日、社長が挨拶に来てくれたとき、最初から正体を明かすことができていたら、私と社長の関係は違ったものになっていたのかな?


お互い素の自分を曝け出せて、今より良い関係を築けていた?

逆に社長に幻滅されて、さっさと引っ越されてしまっていた?


どうなっていたとしても、これだけは言える。

私はきっと社長のことを好きになっていたって。


例え山本さんとしての社長と出会わなくても、こうやって彼のことを知ることができたのなら、間違いなく私は今井大喜というひとりの男性に、好意を持ってしまっていたと思うから……。


社長のことを知れば知るほど切に願ってしまうの。

私のことも社長に知ってもらいたいって。

会社の中での私じゃない、本当の私を知ってもらいたい。

私のすべてを知った上で、まるごと愛して欲しい――。


行きついた思いに、胸が熱くなっていく。

もう覚悟を決めてちゃんと伝えよう。

例え幻滅されたって最悪嫌われてもいい。……このまま社長に嘘をついたままでいるより、何倍もマシ。


すべて打ち明けた上で、また一から片思いを始めればいいじゃない。

だって私、社長のこと堪らなく好きになっちゃったんだもの。


誤解だったとはいえ、彼女がいると知っていても気持ちを止めることが出来なかった。なら片思いくらい、いくらでもできる。

もう彼のような男性と巡り合えない気がするから……。

近いうちに打ち明けよう。


決心した私を乗せた飛行機は、約一時間半のフライトを終え、羽田空港に到着した。
< 269 / 347 >

この作品をシェア

pagetop