ツンデレ社長の甘い求愛
「馬場、この後は?」

空港のロビーまで来ると社長は立ち止まり、腕時計で時間を確認しながら尋ねてきた。


「今日はこのまま直帰でいいと部長に言われておりますので帰ります。社長はお仕事ですか?」

「あぁ、一度会社に戻る。その後大事な取引先の社長と今夜会食予定だ」


出張から戻ってきた夜まで仕事だなんて――。

社長の多忙ぶりに脱帽してしまう。


けれどそんな中、会長に言われてだとしても時間を割いて私に付き合ってくれたんだよね。

今日は別に社長まで付き添ってくれなくてもよかったのに。


「すみません、知らずとはいえ時間ギリギリまで連れ回してしまって。……私のことなんて置いて先に帰られてもよかったのに」


だってもう十七時近く。

急いで会社に戻ってゆっくりする時間もなく、そのまま会食でしょ?

申し訳なく思ってしまっていると、社長はいきなり「バカ」と罵ってきた。


「謝るな。好きでお前と一緒に帰るって決めたんだから」

「――え」

ドキッとしながらも彼を見つめてしまう。

「一緒にいたかったし、もっとお前の仕事ぶり、見ていたかったんだよ。……一番近くでな」
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